報道記者、カメラが退出した後、見守っていた小川秀世弁護士(袴田弁護団主任弁護人)を交えて、5人で懇談しました。
「どうぞ、おかけください」と、ひで子姉さん。検事正は腰掛けて・・
録音していないので、以下、私の記憶によるものです。
(内容を伝えるもので、一字一句違わずとは言えないことをお断りしておきます)
山田検事正が、巖さんに「お体の方はいかがですか」と尋ねました。
巖さん、黙っているので、「イワオさんの体調どうですかと聞いてます」と耳打ち。
すると、「あー、体調はいいです。ありがとうございます」と、巖さん・・「それはよかったです」と、検事正。
小川弁護士が、今日の検事正の話と検事総長談話は整合性がとれないのではと言うと・・いえいえ、検事総長も同じです。ただ、総長談話には足りないところがあり、今後も袴田さんを犯人視しないということ、それを私がお伝えに来たとのこと。
巖さんに、<相当の長期間にわたり法的地位が不安定な状況となり、なんたらかんたら>などと私たちですら分けわからないことを伝えたってしょうもない。
私は、検事正の前で巖さんに言いました。「イワオさんのことを犯人にして、大変申し訳なかったと謝ってます。こがね味噌事件のことなんですよ。イワオさん、わかりますか?」
すると・・
「わかるよ」・・巖さんが普通にそう言ったのです。私はビックリしました、その言い方に!です。しかも、全て聞いていたのか?
「だからね、イワオさん、もう、こがね味噌事件は終わったのです。だから、心配しないで。安心してください、ね」と、続けました。
これは、そのまま普通にいくのか・・と期待してみると、巖さんの目つきが変わっていました。妄想の目です。
あー、ダメだ、もう多分、返事は期待できない。受け入れがたい現実に直面すれば、もう妄想に入り込み外界はシャットアウトです。
このことを、私は検事正に言いました。検事正は、頷いた?ちょっとわかりませんでしたが。
小川弁護士はまた、巖さんのことに触れ、死刑制度や当日に執行を知らされるなど死刑囚の処遇についても見直す必要があると述べると、検事正は、それは管轄外のことですが法務省に伝えると返答。
ここで私は、小川弁護士の発言から、巖さんの精神的傷が癒えていないこと、今だに男性を避けることなどを説明。つまり、無実の人を長期間死刑囚にした過ちが重篤な精神症状を引き起こして巖さんを苦しめていることを言いたかったのですが、検事正は、「あ、それでは長居してご負担をおかけしても申し訳ないですから」と、なんだか私の言葉が「助け舟」になったかのようでした。
そして、椅子から立ち上がってお辞儀、顔を上げた検事正に、ひで子姉さんは、「これ、どうぞ」とお土産を差し出しました。
「え?これ、なんですか?」
「漫画です」と、ひで子姉。
検事正は受け取り、退出。
『デコちゃんがいく 袴田ひで子物語』、ひで子さん、巖さんの苦難の人生が詰まっている漫画ですよ、と言いたかったですが
私の感想・・山田検事正の謝罪に誠意を感じたかと聞かれれば、答えはNOです。おかしな話ですが、再審で巖さんに死刑求刑した静岡地検のボスだけのことはあると妙に納得しました。公判中、検察のお粗末な主張を聞くたびに、ボスの顔が見たいものだと思っていましたが、昨日叶ったところ、検察のロボットにみえました。今思うと、先に来た津田静岡県警本部長のほうが、ずっと血の通った謝罪だった。ブログには「誠意の欠片もない」などと書きましたが、今回はもっとでした。
日本の検察は、厚生労働省村木厚子さんの事件でも自己変革できず、大川原化工機事件、プレサンス事件にみられるようにえん罪を生み続けています。巖さん、ひで子姉さんへのこの謝り方、検察の立証活動は誤りではないと強弁するようでは、世界も注目する巖さんの死刑冤罪は、ただの犠牲で終わってしまうのか・・考えれば考えるほど背筋がゾッとします。
ひで子姉さんの18番、「そうはいくかよ!」、これをみんなでやらないと。
「お口直し」に・・今日の穏やかな巖さんです。
明日は、日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会のイベントあり、巖さん、ひで子姉さんと東京後楽園へ行きます