2020年07月23日

第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪

みなさま、お待たせしました!続報です。

第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪


「袴田事件における検察官の犯罪」と題した小川弁護士の話は1時間半に及びました。ここでは、その全てを記すことはできませんので、今回は弁護団が7月8日に最高裁に提出した「特別抗告理由補充書8」に関する部分のみ簡潔にご紹介します。

先に用語の説明です。
「検面調書」とは、検察官面前調書の略称、検察官が供述を録取して作成し、検察官が供述者にその調書を読み聞かせて供述者が署名押印をした調書のこと。

「員面調書」とは、同様に警察官等が作成する司法警察員面前調書の略。

第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪


<今回発覚した検察官の犯罪>

昭和41年9月9日付自白調書(検面調書)は、日付が虚偽であった。
つまり、唯一証拠として採用された9月9日(勾留満期最終日作成)の重要な自白調書は、存在していなかった
のだ。
(実際には、日付より後に作成したものを、起訴日の日付を記入していた)

◆その根拠
検面調書と起訴状の内容が違っている。
2つの書面とも、検面調書→起訴状の順序で、同じ日に同じ人物(吉村英三検事)が作っている。
検面調書を基に起訴状を書くのだから、当然同じ内容のはず。

ところが、重大な内容が違っている。
まず、袴田さんがクリ小刀で突き刺したとされる4人の順序だ。

検面調書=専務→二女→長男→妻
起訴状=専務→妻→長男→二女


また、被害者3人を突き刺した場所だ。

検面調書=二女:ピアノの部屋、 長男と妻:仏壇の部屋
起訴状=3人とも「居間」


記録上、他にどこにも「居間」という呼称の部屋はない。「居間」がどこか不明。

さらに起訴状のお粗末さ。
「右藤雄が保管していた前記会社の売上現金20万4千95円、小切手5枚(額面合計6万3970円)及び領収書3枚を強取し」

奪ったものが具体的に書かれているが、それがどのように保管されていたものか、
金袋に入っていたことや、9袋あったのになぜ3袋しか奪わなかったのか、何も書いていない。
奪った場所も「居間」。それが検面調書では「仏壇のある部屋」となっている。

冒頭陳述書(昭和41年11月15日)は、起訴状ではなく、9月9日付の検面調書と全く同じ内容。
起訴状より詳しく具体的内容が書いてある。
(冒頭陳述書というのは、第1回の期日の時に、検察官が主張する、これをいまから立証しますよという、より詳細な事実)

つまり、9月9日付の検面調書は、そのずっと後に作られたものと断定できる。

この事件では、9月9日の起訴後も、10月7日まで取り調べを続行している。
起訴後の被告人の取り調べは、通常(弁護人が同意しない限り)許されない。
しかも、起訴後に現金入り封筒や5点の衣類など重要な証拠が現れる。

第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪



◆改ざん理由
巖さんが「自白」したとされるのは9月6日。9月9日には勾留期限が切れる。
強制的に取り調べが可能な期間が4日しかなく、全てにわたって(証拠と矛盾しない)満足な自白調書を作成することは不可能。
9月6日の段階では、単純に次々にクリ小刀で突き刺したという内容しかない。
(妻が2番目になったのは、物音で起きてきたから)

しかし、突き刺した順序が、起訴状の通り、2番目に妻のちえ子さんでは具合が悪かった。なぜなら、冒頭陳述書では以下のようであるから。

「・・・ちえ子が寝室の奥の夜具入れ戸棚の中にしまってあった集金手堤袋の中から3個つかみ出して、『これを持って行って』と叫んで被告人に投げつけ・・被告人は同女がほうり投げてよこした金袋を拾って・・」とされている。
つまり、殺害順序の最後が「妻ちえ子」でなければならないからだ。
子どもが刺されているところで、お金を被告に投げてよこしたことになっているから。

これについては、巖さん自身が最高裁に提出した上告趣意書で真実を語っている。
「正に暗黒裁判というべきものであった。任意性ありとしたデッチ上げ調書の内容さえ検討すれば誰にもわかるように、本件の知らない者が集まって、その者たちの頭の中から生み出された机上の空論であることは明らかである」

事件について開示された録音テープには、肝心の9月7日~9日のうち、8日の1時間の録音(警察での)しかない。それも差しさわりのないところだけ。

これまでも,ここまではわかっていたが,改ざんとまで言えなかった。
理由は,9月9日付の検面調書は,9月7日~9日付の員面調書の内容と重なっているから,同じ頃作られていたとしてもおかしくないと思っていたから。でも,9月7日~9日付の員面調書全部が虚偽の日付か改ざんであったとしたら,9月9日付の検面調書の日付が虚偽であることになる。そんなことがあるのか。

もし,これだけの数の調書が改ざんされたとすれば、どこかに必ず何らか痕跡があるはず。

原本を取り寄せて改ざんの痕跡を探した。
そして、発見したのが、契印改ざんの痕跡だった。

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9月7日付の員面調書の契印がずれているところ(山の左側の縦線が2本になっている)
第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪


第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪



▼日付の改ざんは簡単。
署名するときに、何日の調書に署名しているのかということは、実は袴田さんにはわからない。
この調書をみると、それぞれに契印が打ってある。契印は、後から改ざんできないようにつなぎのページのところに、契印をする。契印は検察事務官の印鑑、袴田さんの指印はいらない。訂正部分も検察事務官の印鑑。本人の印鑑がなくても、自由に訂正できてしまう。あとから訂正しても、全然わからない。(供述調書が)完成した後でもできてしまう。

これまでの捜査機関による数々の違法行為についても説明があったが、今回は省略。
第33回「袴田事件がわかる会」続報 検察官の犯罪




これは、検察官が警察と一緒に行った犯罪である。

<検察官の虚偽公文書作成罪>
◇刑事訴訟法435条7号の再審事由
 原判決の証拠となった書面を作成した検察官、検察事務官若しくは司法警察署員が被告事件について職務に関する罪を犯したことが証明されたとき

これを証明するため、元検察官、元検察事務官の証人尋問を請求した。

幸い、両名とも存命である。

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この裁判には衝撃の事実があります。この1審で死刑判決文を書いた主任判事・熊本典道さんが後に「袴田くんは無実だ」と訴えているのです。その他、色々また次回に!










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