袴田家物語

今日は、ひで子姉さんの誕生日です。89回目です。
（書いているうちに日付が変わりました。誕生日は2月8日）

袴田家に到着して玄関入ると・・すでにお祝いの花、花、花



「おめでと～～」と、入って行くと・・

「朝から、花屋さんやら電話やら次々来てさ～にぎやかいよ～」と、ひで子姉さん、うれしそう。


そうだ！巖さんに、今日はひで子姉さんの誕生日だということを教えなくては・・・なんとおっしゃるかは分かりませんが言ってみましょう。

「ねぇ、イワオさん。今日ね、お姉さんの誕生日なんですよ。お祝いのお花も届いているでしょう」

「・・・」巖さんは無言。

「なにか、お祝いあげますか？お姉さんにお小遣いとか、どうですか」
（どういう反応されるか全くわかりませんが、言ってみました）

「・・・」無言。（ダメか・・妄想の別世界か・・別世界においでの時は聞いていない）

あれしかし、巖さんが右ポケットに手を入れたのを私は見逃しませんよ財布を出そうとされています。私の話、聞いておいでだったか？

「お姉さん、巖さんからお祝いもらったら、きっと喜ばれますね」

「・・・」無言で財布を出される。

「あ、お姉さんにお祝いあげますか。なら、ここに、書きますか、おめでとう、と」
のし袋とペンを出してみました・・・すると・・




さらに、1万円を出してのし袋に入れました。

いや～～ダメ元で言ってはみましたが、こんな事されるとは・・眼前の出来事にただただ驚き。

「なら巖さん、お昼ご飯食べる時、お姉さんにあげましょうか」、そう言って私は離れました。
巖さんは無言。

少しして、ひで子姉さんが巖さんの部屋に入ると・・

「えっ、何これ。え～～？な～に～？、え～？これ、私にくれるのぉ～？」
ひで子姉さんの大声が聞こえるので、行ってみました。

「いや～～、うれしいよーー。すっごく、うれしい！ありがとねーー」

ひで子姉さんの目が潤んでます

「イワオがね、コレとか言ってよこしたの」（「おめでとう」とは、まだ言えない）

そして、巖さんがうれしそうに微笑んでいるのでした。（妄想中の顔ではない巖さん）


奇跡的！です。

巖さんは、ひで子姉さんのことを「姉なんかじゃない」「関係ない」などと言ったりしたこともありました。
それも、釈放されてお姉さんの家で暮らしていても、です。
死刑えん罪の現実に耐え切れず獄中にいる時から精神に不調をきたしていた巖さんですが、今も基本的には変わっていません。

ひで子姉さんは巖さんに何と言われようが（「メキシコのババアだ」などと言われたこともある）、否定はせずに巖さんのいう事を受け入れ温かく包み込んできました。

長い長い時間をかけて、凍り付いた巖さんの心をジワリジワリ溶かしてきた・・その事の現れでした。

感動せずにはいられない出来事でした。

お姉さん、最高のプレゼントでしたね。


この後、袴田事件弁護団事務局長の小川先生からZOOMでお祝いメッセージが届きました。

長い付き合いの二人は、まるで親友のようです。

袴田チャンネルでご覧ください　→https://www.youtube.com/watch?v=WMKSWorgOXQ

ひで子姉さん89歳、喜びの1日目・・最後は本人のこの言葉で。

「歳なんて、どーってことないよ。歳なんて、関係ない」