2024年01月26日

袴田再審6回目 傍聴記③真犯人の闇

今回は、小川秀世弁護士の冒頭陳述についてです。
残虐な犯罪事実が明かされ、衝撃が走りました。

総論 事件の「捜査」は全く終わっていない》(筆者要約)

1,「砺波鑑定」と「5点の衣類」衣類を比較できる《みそ漬け実験》
5点の衣類のズボン装着実験(袴田さんに履かせてみた)でズボンが小さくて太ももまでしか履けなかったことから、長期間味噌に漬けたら純毛のズボン(5点の衣類のズボンと同じ)は縮むのか実験したのが「砺波鑑定」。確定前の控訴審・東京高裁で、麻袋に入れた味噌漬け実験をしている。
使用した「みそ」は「5点の衣類」が入っていた1号みそタンクと同様のもの。
47年、みそ漬け期間は2ヶ月半。漬けたのは、純毛の繊維。
49年、みそ漬け期間は3ヶ月半。漬けたのはズボン。
(5点の衣類、みそ漬け期間は13ヶ月)

比較結果
麻袋
砺波鑑定に使用された麻袋→ほぼ真黒・麻の目には味噌が詰まっている。
「5点の衣類」の麻袋→汚れ少なく明るい茶色・麻の目には隙間あり反対側が見える。

ズボンの白っぽい裏地(黒っぽいズボンなので表側は似ている)
砺波鑑定に使用されたズボン裏地→明らかに濃い茶色
「5点の衣類」のズボン裏地→白っぽさが残っている
(実物が展示され傍聴する私にも見えたが、麻袋もズボンも違いは一目瞭然)

2,「5点の衣類」緑色ブリーフは袴田さんのものではない
袴田さんの緑色ブリーフは、逮捕された後に同僚から実家に送られた荷物の中にあり、袴田さんに差し入れしようとした兄が持っていた。(差し入れできなかったため)
味噌タンクから「5点の衣類」を発見した従業員は、緑色ブリーフを見て袴田さんの物だと思い込んでいた。当時は他に緑色ブリーフを履いている者がいなかったため。
(他、ここでは割愛)

3,「5点の衣類」ズボンが袴田さんに履けない理由は、太股(ふともも)の「わたり」サイズが極端に小さいため。
専門家の鑑定によると、袴田さん自身のズボンと比較すると「5点の衣類のズボン」は2サイズくらい小さなサイズ。だから袴田さんは履けなかった。
(澤渡鑑定、真壁鑑定、他ここでは割愛)

4,犯行態様の見直しで浮かび上がる「真犯人の闇」
「起きたまま」「複数人に拘束され」「苦痛を強いる」刺殺だった

見直されるべき「強盗殺人放火事件」の実情
警察・検察官が主張、その通りに事実認定され判決が確定、再審請求審でも同様に認定されてきたこの事件の前提(1人の犯人がお金を奪う目的で、深夜、4人が寝静まった後に被害者宅に侵入、刃物で次々に被害者を突き刺し、最後に混合油をかけて放火した)は実情と違う。

怨恨が動機・犯人は複数・被害者4人は全員起きていた。

被害者は縄のようなもので縛られ刺殺された
「苦痛を強いられた」殺害実態

▽長男・雅一郎さん→左手指の第2関節から先がない。焼けていないことから犯人に切断されたと考えられる。

▽次女・扶示子さん→頭蓋骨に穴が開くほどの強い打撃を受けている

▽父親(専務)・藤雄さん→右腕の骨を折られている。

▽父親(専務)と母親・ちゑ子さん→顔面に酷い暴行、前歯折られ一部歯欠損
警察官、解剖鑑定人による記録が全くない。

現場の写真には「縛られていた」痕跡
4名が首、腕、足などに縄、テープ状のものなど巻きつけられ動けないようにされていた。

→証拠として遺体の写真展示(法廷内2箇所ある大スクリーンの電源は切られ、傍聴席から写真は見えない)

⑤被害者4人の刺し傷の分布、不自然な遺体状況
被害者らは、縛られたまま寝かされ、動けない状態で刺された。
4名とも手足、顔、首がひどく焼かれている。
(個人別はここでは割愛)
被害者全員、浅い傷が多く心臓を外れている→被害者らにより大きな苦痛

犯行態様は複数犯でしかありえない
1人では不可能。袴田巖さんは無罪であることは明らか。

⑦警察は事件直後から「重大な事実」を隠蔽しようとした
今回の参照資料は、県警が保管していた写真記録。
再審請求審になって開示された大きなサイズのものを見て初めてわかった。

⑧写真や物件の隠蔽は「不都合な真実」の存在を示唆
これらの写真は、事件直後に警察により撮影されたものばかり。
証拠写真の選択も警察。遺体の説明も警察。
現場で見分した警察官は、遺体に縄が巻かれている状態を見ていた。
しかし、その記載は一切ない。
警察が、事件直後から事実を隠し、証拠を隠し、事実とは異なる方向に目を向けさせてきた。
その理由・・
一部の警察官が真犯人を知っていたとしか考えられない。
警察が他の証拠をねつ造する動機も十分あった。
もっとも大がかりな「証拠ねつ造」が「5点の衣類」だった。

「真犯人を知っていた」闇の存在
動機が怨恨、犯人は複数→犯人と被害者は顔見知り。故に混乱なく侵入できた。

被害者らが起きていた証拠
長男・雅一郎さん→ワイシャツ着て、胸ポケットにシャープペン、左手首に時計
次女・扶示子さん→衣服にブラジャー着用
ちゑ子さん→金属バンドの腕時計、左手中指には石付き指輪
藤雄さん→金属バンドの腕時計
午前1時過ぎで寝ていたとすれば入浴後を思われ、不自然。

結語 とりあげた全ての項が「袴田さんの無実」を支える
検察官の主張する袴田さんの「犯人性」は成り立たない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全身から湧き上がる正義、小川弁護士が法廷を制圧したようにすら見えました。
袴田再審6回目 傍聴記③真犯人の闇


最後に、事件当時の静岡新聞記事記事(41年6月30日夕刊)を紹介します。
見出し「猟奇的な犯罪、沢口清水署長の話
「今度の事件は、凶悪犯罪を通り越して猟奇的なものさえあると思われる。それほどひどく刺されている」






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この記事へのコメント
真犯人についてもっと考察されれば、袴田さんが犯人じゃない事は明白なのに!警察も腹が立つ!
裁判もクライマックスが近づきつつありますね。
小川弁護士もう少し、頑張って下さい!
Posted by まりお at 2024年01月26日 12:43
小川弁護士の冒頭陳述について、ブログにアップしてくださり、ありがとうございます。
事件当時の静岡新聞記事(41年6月30日夕刊)の部分を60年近くたち結審を見ない裁判下である今読みますと、巌さんに罪を着せて得している人たちの存在を強く意識せざるを得ません。
「こんな社会に生きていたくない」
これが率直なばばの気持ちです。

弁護団の先生方、支援者の皆様方、巌さん、ひで子さん
心から応援しております。
Posted by たろばばちゃん at 2024年01月26日 14:32
最近、袴田事件をWEBで検索しますと「真相と思われる」内容の記事が突然に沢山アップされ始めているのに気が付きました。当時の警察官や裁判官の実名が載っているものもあります。機が到来したということなのでしょうね。
しかしここに至ってはただ巌さんと秀子さんのご健康をお祈りするばかりです。
今回の再審は、本当の意味で司法制度に裏打ちされたものではなく、
村山弘昭さんという一人の裁判官の良心(検察に証拠開示を命じたこと、
再審開始の決定、釈放)によってありえた、薄氷を踏むようなプロセスによって
可能になったことと考えます。
日本が法治国家なら再審法改正は絶対に必要です。
そのためにも、なぜ袴田さんがこんなにひどい冤罪を着せられたのか、きちんと検証すべきではないでしょうか。
Posted by トライアングル at 2024年01月26日 16:49
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